【完】切ないよ、仇野君

前半を12点差で折り返し、リードを守る荒商。


慧心の応援が多かった会場が、一人、また一人と荒商の応援に変わっている。


会場をも味方に付けた荒商の勢いはこのまま止まらない。


…………と、誰もが信じていたのに。


前半のマンツーマンディフェンスから、後半はゾーンディフェンスに切り換えた慧心の戦略が、歩君に襲いかかった。


それもきっと作戦のうちだっただろう荒商サイドだけれど、慧心サイドは、一人、捨て身のプレイを歩君に仕掛ける。


まるでタックルをするようなその動きに、歩君は避けることも出来ず倒れる。


「……!?歩君!」


ボールを持っていたせいで手を突くことも出来なかった歩君は、顎からフロアに接触したように見えて、なかなか起き上がらない。


勿論慧心サイドは、故意の接触としてアンスポーツマンライク・ファールを取られて荒商にフリースロー二本を与えたわけだけど、歩君がフリースローを打てる状況だとは思えない。


試合は一時的に中断。歩君は、他の荒商の選手に担がれてコートから退く。


フロアには、歩君から流れたのだろう。赤い鮮血がこびりついているのがここからでも見えた。