【完】切ないよ、仇野君

そんな荒商対慧心の戦いは、前半から歩君が全力で点を取りまくる展開になっていく。


その攻撃的でディフェンスを寄せ付けない速くダイナミックなドリブルと、アメリカの選手を見ているような豪快なプレイ。


なのに、ただパワーとスピードがあるだけじゃなく、ちゃんと根底にある確かな技術。


歩君のプレイには、将来確実に彼はスターダムへと上り詰めるだろうという『主役級』の強さが詰まっているんだ。


「たまに無性に歩が羨ましいて思う。俺はどやん努力したって、歩みたくぎゃん巧かプレイヤーになれんけん」


話しかけているようで、独り言のような泰ちゃんの小さな呟きが、私の胸を締め付ける。


泰ちゃんは主役になれるプレイヤーじゃないけど、泰ちゃんにしか出来ないことが沢山あるポジションにいる。


だけど、それでも歩君へ叶わない羨望を寄せるのは、きっと、私が雅美や由貴先輩、他の女の子達へ抱くものと同じだと思うから。


だからその気持ちが良く分かって、胸の奥がヒリヒリするんだ。