【完】切ないよ、仇野君

溢れそうな想いに蓋をして、厳重に鍵をかける為に、私は一階フロアへと目線を落とす。


「次やって、そん次の本選やって、嫌てぐらい呼ぶばい。……ほら、荒商と慧心の試合、始まる」


「……おう」


決してお喋りな方じゃない私達は、これ以上会話をするでもなくもうひとつの準決勝を見守る。


去年の夏の成績から、第二シードは荒商、第三シードは慧心だけれど、格は慧心の方が上。


挑戦者である荒商サイドは、目の前の格上に対して物怖じしているどころかわくわくしているよう。


敵だけど、いつも私を照らして明るい道へ導いてくれる歩君を、応援せずにはいられない。


たった12人、全員がベンチ入りしている荒商に対して二階席にも沢山部員がいる慧心は、応援も圧倒的に慧心の方が多い。


でも、そんな状況の中でもいつも荒商は挑戦者としての勢いと、ハングリー精神を忘れないで、様々な強豪校を破ってきたんだ。