【完】切ないよ、仇野君




対肥後学、準決勝は、第一クォーターから彼等の勢いをへし折る泰ちゃんのプレイの押収で幕を閉じた。


30対25と、かなりのロースコアな試合だったことが、互いに速攻型のプレイをどれだけ阻み、どれだけ我慢した試合だったか物語っている。


我慢比べの試合を終えた選手達は、勝者と敗者では光と闇のよう。


ベスト4で、どんなに表彰が決まってようが、相手の肥後学の夏は終わり。彼等の悔しさが滲む背中に、喉から酸っぱい味が広がった。


「優し過ぎっとよ、ちーは。……喜んでばい。俺等ん夏は終わらん。次も勝って、もっと上に進むんよ」


喜びに包まれる水高サイドの二階席に上がった私達だったけど、浮かない顔をしていたらしい私に気付いた泰ちゃんは、ふわりと穏やかに微笑んでくれた。


「……俺は嬉しかった。ちーがあん時俺ば見ちょってくれた。名前ば、呼んでくれたこと」


泰ちゃんの、人よりテンポの遅い甘い声が私の心を揺らして、封印していた恋心へと語りかけてくる。


私の声は、確かに君に届いてた。それだけで嬉しいことなのに、私は欲深い。君の言葉をもっと欲してしまうんだ。