【完】切ないよ、仇野君

椿はそのゾーンに入る前にケイ先輩にパスをして、全てを任せた。


ケイ先輩は、三対一のこの状況でも左足を軸に、ドリブルの技巧で相手を翻弄。


三人全員崩せなくても良い、そのゾーンに綻びが出来てしまえば後はケイ先輩の独壇場。


普通の5on5では見れない、フリースタイルに近い見せるバスケをするケイ先輩は、変則的なドリブルでそのゾーンの綻びを縫ってゴールへ進撃。


そして、決してジャンプが高いわけじゃないのにどうしてか滞空時間の長い、不思議なテンポのレイアップを一本、ヒョイと沈めた。


「ひゅう、悪くないね、ザコタせ……じゃなくて、ケイ先輩」


「お前またザコタって言うたろ!わざとやな!?これ終わったらシバくけんな!」


お得意の仲良しな言い合いをしながらのハイタッチを見せた二人に、客席がわっと盛り上がる。


目立ったのは二人だけど、この得点は、エースを足止めした泰ちゃんやキャプテン、雫ちゃんのおかげだというのを、一体この会場の何人が分かっているんだろう。