「こん間の歩の出来やったら、荒商もいかんかもしれん。勿論、俺達やって……」


不安な言葉を残して試合に見入る真剣な眼差しは、やはり、コートの中にしか向いていない。


相手チームも勝ち進んでベスト8戦に挑んでいるチームなのに、まるで、バスケを始めたばかりのチームがプロのチームに挑んでいるくらい広がっていく点差。


ざわざわする胸をぎゅっと押さえて顔を上げれば、泰ちゃんの横顔の奥の時計が見えて、時間がことのほか進んでいたことに気付く。


「泰ちゃん、そろそろ行かなんよ!試合、始まる!」


「え……わっ!もうこんか時間!先生に怒らるーばい!」


夢中になっていた私達だけど、急ピッチで準備して、自分達の試合の方へと走り出す。


頬に当たる風は、私の、私達の夏へのわくわくと、ドキドキと、ハラハラと……様々な想いが詰まった香りがする、そんな気がするんだ。