「小鳥遊、左脇腹痛いんやなか?痛み軽いうちから、早めに治療せんと悪化するばい」


「!?」


そう。何となくだけど、朝から小鳥遊が左脇腹を庇っているような気がしてならなかったんだ。


バスケって激しいスポーツみたいだし、打ち身なら早めに手を打った方が良い。


それだけ言うと、私は先に席の方へ向かっていた雅美を早足で追いかけた。


「……俺、全く気付かんかった。なぁ椿、彩月さんなら、もしかして」


「あぁ……俺達で、推してみよう」


離れた直後、まさか二人がこんな会話をしているなんて……。


私のこの『小さな気付き』が、私に熱くて、甘酸っぱくて、切ない夏をもたらすなんて、この時は思ってもみなかった。