【完】切ないよ、仇野君

救急箱の中のコールドスプレーがもう少量になっていたっけ。


なんて思い、私は電気を点けて棚の一番上の段にあるコールドスプレーへ手を伸ばした。


取って後ろを振り返ると、使い古してステップの青が薄れた脚立が目に入る。


それは、由貴先輩や他の部のマネージャー達が上段の物を取る時に使うもので。


背の高い私には、到底無縁の産物。


これがプラス思考の人だったら『背が高くてラッキー』なんて思えるんだろうけど、私にはあれに乗らなきゃ行けない彼女達が羨ましくて仕方がない。


「……いかんいかん!私、変わらなんとよ、頑張っとる皆ば支える為に、変わらなんどが」


声に出して言い聞かせても、心の奥底のうざったい羨望は、キリキリと私の心臓を痛める。


やっぱりそう簡単に、人って変われないのかな。


痛い心臓を守るようにTシャツの布地を握り締めれば、心臓ごと握り潰せそうな気さえする。