…桐生くん、教室にいるかな? 緊張で震える手を抑えながら、ゆっくりと目の前の教室のドアを開ける。 「…あれ?」 教室の中には誰もいない。 微かに外から聞こえる運動部の人たちの声と、チクタクと時を刻む時計の秒針の音だけが聞こえる。 あるのは、私のかばんと隣の席にある桐生くんのシンプルな黒いリュック。 桐生くんには黒が似合うな、なんて。 今はそんなこと考えている場合じゃない。