「でもその日、不思議と嫌じゃなかったんだ。 いつもなら断るのにな」 「え?」 「本当はその時からどこかで、あの女の子が沢城さんなんだってわかってたのかもな」 その日を思い出しているのか、どこか遠くを見る桐生くん。 そうだ、まだ桐生くんに伝えてないことがあるんだった。 「桐生くん!」 「ん?」 私の呼ぶ声で私の方を向く桐生くん。 「あの日、助けてくれてありがとうございます!」 ペコッと頭を下げる。 やっと言えた。 ずっと言いたかったお礼。