「それ何?」 桐生くんが私を包む手を離して、なくなる温もり。 その代わりにはっきりと目の前に映る桐生くんの顔。 この人に抱きしめられたんだと思うと、恥ずかしくて、嬉しくて…… 心臓がドキドキと波打つ。 「ねぇ、聞いてる?」 「…わっ!あ、うん」 ぼっとしていた私は桐生くんに顔を覗かれてはっとする。 「絶対沢城さん聞いてなかったよね?」 「ごめんなさい…」 「いいけどさ。それは?」 それと言う桐生くんの見る先は、私の右手にしっかりと握られた小さなラッピングされた袋。 「あっ………!」