「沢城さん」 「はい」 呼び止められたのは、診察室を出ようとドアに手をかけたとき。 「もし…もし奏汰が悩んでいたら伝えてくれないか」 そう言う桐生くんのお父さんの目は、誰かを愛しく思う目だった。 お医者さんではない、親としての目をしていた。 「これを…ですか?」 渡されたのは小さなメモ用紙。 「体調が悪いのにごめんよ。沢城さんにお願いしたいんだ」 その声はあまりにも真剣で… 「はい、わかりました」 そう答えた。