「薬もらってさっさと帰るぞ」
「う、うん…」
さっきの桐生くんのお父さんとの会話は聞こえていない。
大丈夫。
そうは言われても、桐生くんの顔色をうかがってしまう。
意識してしまう。
前までは好き好きって、毎朝登校する桐生くんのことを見に行ったり、追いかけたり。
ストーカーなんじゃないかと思われるくらい積極的に行動していたのに……
気持ちの距離はまだ遠いかもしれないけど、一気に距離が近づいた瞬間、何も出来なくなってる。
久しぶりに“好き”という言葉を口に出して、桐生くんにこんなにドキドキして……
いつの間にか、前以上に桐生くんのことが好きになっていたんだ。
そんなことを考えていると、一人で赤くなってしまう。
「……どうした?大丈夫か?」
いつも冷たいくせに、たまに見せるこの優しが大好き。



