「い、言わないで下さいね?」
もし桐生くん本人にバレてしまったら、きっと近くにはいられなくなってしまう。
桐生くんに告白しに来る女の子と同じようにきっと冷たく追い返されるんだ。
それは絶対に嫌だと不安ながらに言ったのに……
私とは対照的に笑い出す先生。
「いやいや、ごめんよ。沢城さん分かり易いから、もうバレているかも……」
「そ、そんなっ!!」
もし本当にそうだったとしたら……
これから私はどうすればいいんだろうか。
「まぁ、心配することはないと思うよ。あと、今回の熱はただの疲れからの風邪だから、ちゃんと睡眠取らないとダメだよ」
心配ないなんて言われても、不安なものは不安だよ。
その話はサラッと流されてしまって、本題に戻る。
さすがお医者さんだと思うくらい、睡眠不足なことを言い当てられてしまった。
「……はい」
「あと、薬も出しておくから飲むように。お大事にね?」
うっ……薬。
処方されるかもしれないとは思っていたけど……
飲みたくないよ。
でも、注射がなかっただけましかもしれない、なんて思う。
ペコッと頭を下げて、やっと診察が終わった私は診察室を出る。
桐生くんは診察室を出てすぐの廊下の壁に寄りかかりながら待っていた。



