「おまたせしました」
制服に着替え終わって保健室から出ると、桐生くんは壁に寄りかかりながら待っていた。
「はい」
目の前に差し出される桐生くんの手。
「……?」
熱のせいか頭が働かない。
この手は何?
もしかして……おて、とか?
さすがにそれはないよね…
いろいろと動かない頭で考えていると
「何考えてんだよ。かばん持つから」
お願いとも、持たなくていいとも言う前に、私の手から奪われるかばん。
「あっ!」
「病人はおとなしくしとけ」
ほんの少しの間で、桐生くんはまた意地悪になった。
ただ、気のせいかな?
桐生くんの頬もほんのり赤い気がするんだ。
もしかして……
「桐生くん、もしかして…私の熱移っちゃいました?」
私より背の高い桐生くんには手が届かなくて、背伸びをして額に手を当てる。
「なっ……!熱なんかねーよ」
さっと私を避けるように後ろを向いてしまった桐生くん。
私、悪いことしちゃったかな……
桐生くんに嫌われちゃったらどうしよう。
私の頭の中はそればかり。
だから、桐生くんの顔が赤くなってるなんて、少しも気が付かなかった。



