元旦、2日、3日。


待っても、先生からの年賀状は来なかった。

絶対返さなきゃならないものじゃない、って分かってる。

先生、忙しいのかもしれないし。

年賀状は、出さない主義なのかもしれないし。


だけど、何だかさびしくて。

微妙な心境で、新年を過ごした。



そして、最初の登校日。


生物実験室に行ったら、私の席に川上先生の名刺が置いてあったんだ。



「先生、これは?」


「俺の名前。」


「へ?」


「お前、年賀状の宛名、俺の名前間違えただろ。」


「え?」



いやいやいや、絶対間違えてない。

間違えるはずがない。

というか、間違えるところがない!

川上裕一なんて、どこも難しくないし。

大好きな先生の名前を、間違えるはずがないし!!



「ぜーーーーったい間違えてないです!!!」


「なんだ、じゃあお前じゃなかったのかな?」



急に自信を失くす先生。



「だから年賀状、出さなかったのに。」



いや、意味が分からない。

私が先生の宛名を仮に間違えたとして、どうしてそんなにむきになるの?


そこから私は、先生の話をすべて無視した。

なんだか分からないけれど、無性に腹が立った。


事実はどうだったのか知らないけれど、なんだかすごく悲しくて。


埋もれてしまわないようにって、一生懸命選んだデザインも。

間違えないように下書きして、丁寧に書いた宛名も。

全部、ないがしろにされた気がして。



完全無視を決め込む私に、先生は悲しげな目を向けた。

だけど、そんなのにはもう騙されないって思った。


先生の名刺を貰うっていうのも、なかなかレアだけど。

でも、ちっとも嬉しくなんてなくて。