それで、修学旅行に旅立った私。

なかなか楽しい旅行だったのだけれど、その内容はまあいいや。

だって、旅行中には川上先生は、全く出てこないから。



それで、修学旅行の次の日の朝。

お土産は家に送ったから、届くのは私が帰るより後だったんだけど。

先生へのお土産は、しっかり私が持って帰ってきた。

だから、次の日に渡せたんだ。



「先生、お土産です。」


「冗談で言ったのに。」


「そうですかー?」



あの頼み方は、ちっとも冗談には聞こえなかったけど。



「もう一個あるんです。」



そう言って、先生の机に、小さな小さなシーサーを勝手に置いた。



「魔除けだな。」


「先生の……守り神です。」



精一杯の願いを込めたつもりだった。

悲しいくせに、いつも笑っている先生に。

そんな先生を、守ってくれるシーサーを贈りたかった。

先生の味方がいるって、伝えたかった。



「ありがとう。」



先生は、優しく笑ってくれたね。



「お前、模試出来てたじゃん。生物『だけ』。」


「今回は、頑張ったんですよ。」


「後、お前のネックはあれだな。ほら、そこに担任さんがいるから、大きい声では言えないけど。」


「あれですね。」



そんなことを言って、担任の背中をちらっと見た。

川上先生も、私の味方だ。


シーサーは、私の置いたままに、先生の机に鎮座していた。