その後―――


私は、先生に約束した通り、頑張ったよ。

N大に来てよかったと思えるもの、いくつか見つけた。



N大に入学したばかりのとき。

「はるちゃんだよね?川上先生から聞いたよ!」

そう言って、色々教えてくれた先輩は、川上先生の教え子だった。



そして、学園祭に行ったあっきーも。

「川上先生、晴子のこと心配してたよ!もうー、晴子の話ばっかりなんだから!」

そんなこと言ってくれたっけ。



離れてるのに、どうして今も私の耳には、川上先生、っていう名前が聞こえてくるんだろう。

どこにいても、守られている気がするのは、なぜだろう―――



2年生になって、私はある、ちょっと有名な短歌の賞を取った。

大学生になってから、高校時代に私の歌を最優秀に選んでくれた先生に、師事するようになって。

そして、高校時代から作っていた50首の歌が、雑誌に掲載されたんだ。

それは、半分くらいが川上先生のことを詠んだものだったから、なんだか恥ずかしかったけど。

その賞のおかげで、私は何度か地方紙に載った。

後日、今お世話になっている大学の教授がこんなこと言ってくれたんだ。



「はるちゃん、新聞に載ったんだって?」


「え、どうしてご存じなんですか?」


「川上先生に聞いたよ。」



はっと息を呑んだ。

もう、2年も経ったのに。

川上先生の名を、大学にいてまた聞くなんて。

それに、新聞を見ていてくれたなんて―――


その教授は、川上先生の友達。

だから、川上先生の呼び方が移ったらしくて、いつも「はるちゃん」って呼ぶ。

それもまた、川上先生の名残りだ。


こんなふうに、川上先生の気配に囲まれて、大学生活を過ごしているんだ。

それが嬉しくて、ちょっぴり切ない。