そして迎えた新学期。

教科担任の名前が書かれたプリントが配られて、教室が騒がしくなる。



「あ、」


「あーっ!生物の先生、横山先生じゃなくなってる!!」



亜希子が大声を上げる直前に、私はそのプリントに目が釘付けになっていた。



――生物:川上裕一先生



「晴子、川上先生って誰だっけ?」


「いつも白衣着てる先生だよ!」



そう答える私の声は、いつの間にか弾んでいた。

その頃は、先生に少し興味があっただけだけれど。

楽しい一年間になる、そんな予感がしたんだ。



「いつも白衣着てる人?」


「副担の挨拶のとき、号泣してた先生。」


「え、そんな人いたっけ?」



え、あれって結構私にとっては衝撃的だったんだけど。

意外と、みんなには忘れ去られてしまうような出来事だったんだね。

春休みの短い間で。



私は、覚えてるよ。



先生の不安定な心を、ほんの少し垣間見たあのスピーチ。


あの頃はまだ、先生には笑顔より、涙の方が似合っていたね。




本当の先生は、笑顔の方が似合うんだってこと、私はまだ知らなかった―――