あの午後は、生物講義室に光が溢れていたね―――
まだ、先生のこと何にも知らなかった私。
高校一年生だった私。
あの光あふれる午後のこと、一生、忘れない。
「板書が綺麗で、消すのもったいない。」
「晴子、先生いるからね。」
「え?」
振り返ると、そこには嬉しそうに微笑む先生がいた。
先生以外に、何も見えなかった。
「あ、」
思わず、顔が火照った。
こんなに近くに先生がいるのに、先生の書いた板書を素直に褒めてしまった。
先生は、生物講義室の掃除監督だった。
一週間交代で、いろんな場所の掃除が回ってくる。
でも生物講義室は、たまにしか来ない。
いつも、教室の端の方で存在を消すようにして立っている先生だった。
あんまり笑わない先生だった。
最初と最後の挨拶のときだけ、環に加わって。
それ以外に、余計な口は全くきかない先生。
そんなイメージしかなかったのに。
あの日、初めて笑顔を見たんだ。
先生に気付かなくて、黒板の字を褒めた、あの日。
先生は、覚えてる?
きっと、覚えてないだろうね。
まだ、先生のこと何にも知らなかった私。
高校一年生だった私。
あの光あふれる午後のこと、一生、忘れない。
「板書が綺麗で、消すのもったいない。」
「晴子、先生いるからね。」
「え?」
振り返ると、そこには嬉しそうに微笑む先生がいた。
先生以外に、何も見えなかった。
「あ、」
思わず、顔が火照った。
こんなに近くに先生がいるのに、先生の書いた板書を素直に褒めてしまった。
先生は、生物講義室の掃除監督だった。
一週間交代で、いろんな場所の掃除が回ってくる。
でも生物講義室は、たまにしか来ない。
いつも、教室の端の方で存在を消すようにして立っている先生だった。
あんまり笑わない先生だった。
最初と最後の挨拶のときだけ、環に加わって。
それ以外に、余計な口は全くきかない先生。
そんなイメージしかなかったのに。
あの日、初めて笑顔を見たんだ。
先生に気付かなくて、黒板の字を褒めた、あの日。
先生は、覚えてる?
きっと、覚えてないだろうね。