その様子に気づいた父帝は眉を下げる。







「朝日や。


沙霧のことで、まだ塞ぎ込んでいるのか」






「あ………すみません。



このような席で暗い顔をするなど、無粋でございました」







朝日宮はすぐに感情が顔に出てしまうことを恥じ入った。





殊勝な態度ですぐに頭を下げた朝日宮に、帝は優しく微笑みかける。







「よいよい、気にするな朝日。



そちはことのほか沙霧に懐いておったものな。


あやつが黙って姿を消したのを、誰よりも思い悩んでおろう」






「はい………」







帝は、この素直な性質の末の皇子に対しては、昔から甘かった。







「………予も同じぞ。


予にとっても沙霧はかけがえのない皇子だ、心配で仕方がない。



今、検非違使(けびいし)たちに命じて方々を捜索させている。


すぐに見つかるだろう、あまり思い煩わぬことだ」







「はい、ありがとうございます」







朝日宮はもう一度頭を下げた。







「さ、朝日、まぁ座れ。


沙霧のことは今すこし忘れて、今宵は宴を楽しむがよい」







朝日宮は頷いて高麗縁の畳に腰を下ろした。