*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

高坏(たかつき)の上には漆塗りの椀や皿が並び、見た目にも美しい、趣向を凝らされた料理が盛られている。




朝日宮は母に促されて箸をとったが、しかし食欲がなく、香の物を少しつまんだだけだった。






ほろ酔いの状態で脇息(きょうそく)に半身もたれ、ぼんやりと楽の音を聴いていると、しゅ、しゅ、と衣擦れの音が聞こえてきた。






「…………宮さま」






御簾の向こうから声がかかり、朝日宮は盃(さかずき)を置いて顔を上げる。




御簾の隙間に手を入れて少しだけ捲りあげると、帝付きの男童(おのわらわ)が孫廂に控えていた。





「どうした」





「上さまよりお召しにございます。


皇子さまがた全員を、お集めになるようです」





「そうか、ありがとう」






朝日宮は腰を上げ、御簾から出ると、最奥の帝の御座(おまし)へと向かった。