*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「…………それはきっと、私が入内してから得た、世渡りの術(すべ)みたいなものよ。



一生逃れることのできない、この後宮という場所で、上手く生き延びていくための………」







どこか諦めたような声音で明子は言った。






「そういうふうに耐えるだけ、というのは、本当は褒められたことではないの。


ただ、私はもう、争ったり抗ったりするのに疲れてしまったのね。



………あなたには、こんな生き方はして欲しくないんだけれど。


でも、皇子として生まれてしまったからには、仕方のないことなのかもね………」






「そうなのでしょうか………」






どこか寂しげな笑顔に、母のこれまでの苦悩や葛藤が垣間見えた気がした。