*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

(ーーー大変なことになった。



このままでは、あいつに会えないどころか、わたしの命さえも危ない………)






寒さに血の気を失った顔をさらに蒼ざめさせて、沙霧は呆然と雪原を見つめる。




全身に触れている雪に体温を奪われ、身体の芯が急速に凍えていく。




強い雪風にさらされている耳と鼻は千切れそうに痛い。





容赦吹きつける雪が、額に、頬に、唇に、顎に貼りつき、睫毛の上にも雪が積もっていく。





唇は冷えきって、全く動かない。



歯の根が合わず、自分でも笑えてくるほどにがちがちと音を立てて震えていた。





雪の中の身体は、もはや感覚を失っており、なぜか逆に暖かいような気までしてきた。







(………暑さも寒さも感じなくなったら、いよいよ危険だと聞いたことがあるが。



それが本当なら、今のわたしはかなり危ない状態なのだろうな………)







吹雪はさらに強くなってくる。





だんだんと目が霞んできた。




頭の芯がぼうっとして、何も考えられなくなっていく。