「どうせ、沙霧の兄上のことを考えているのだろう」
その言葉に、朝日宮は目を丸くする。
「え………どうしてお分かりになったのですか」
奥津宮は微かに口許を歪めたようだった。
「お前は兄上によく懐いていたからな。
しかし、もう諦めるがよい。
沙霧の兄上は確かに優秀な方ではあったが、どうも欲がなく、気持ちが弱いところがあった。
あのような御方は、主上(おかみ)の春宮(とうぐう)としては不足だよ。
それに気がついて、自ら内裏を出られたに違いない。
しかも、母君の栄耀殿の女御が身罷られてからは、後宮でのお居所もないようにお思いになったんだろう。
つまり、お逃げになられたのだよ、この宮廷から」
決めつけるような言葉に、朝日宮の胸の奥から不快な思いが沸き上がった。
しかし、兄皇子に対して反抗するような口のきき方をすることもできず、ぐっと苦い思いを抑え込んだ。
その言葉に、朝日宮は目を丸くする。
「え………どうしてお分かりになったのですか」
奥津宮は微かに口許を歪めたようだった。
「お前は兄上によく懐いていたからな。
しかし、もう諦めるがよい。
沙霧の兄上は確かに優秀な方ではあったが、どうも欲がなく、気持ちが弱いところがあった。
あのような御方は、主上(おかみ)の春宮(とうぐう)としては不足だよ。
それに気がついて、自ら内裏を出られたに違いない。
しかも、母君の栄耀殿の女御が身罷られてからは、後宮でのお居所もないようにお思いになったんだろう。
つまり、お逃げになられたのだよ、この宮廷から」
決めつけるような言葉に、朝日宮の胸の奥から不快な思いが沸き上がった。
しかし、兄皇子に対して反抗するような口のきき方をすることもできず、ぐっと苦い思いを抑え込んだ。



