*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語








夜の帳(とばり)があたりを包み込み、宴の始まる時刻となった。






今宵の宴は、後宮の中央に位置する麗明殿(れいめいでん)の中庭で催される、帝主催の管弦の宴である。




招かれているのは、後宮に仕える女たちと、帝の皇子、皇女たちだった。






女房たちを引き連れて母と共に麗明殿に向かっていた朝日宮は、途中で、瑞雲殿の女御と奥津宮の母子に会った。






「奥津お兄さま」


 

「あぁ、朝日か」




「たいへんご無沙汰しております」




「あぁ」





奥津宮はさして興味もなさそうに頷いた。




そこで会話が途切れそうになってしまったので、朝日宮は慌てて話題を探し、ここのところもっぱら噂になっている目出度い話を思い出した。