そうして、最後に誕生した十の皇子が、第七の妃、綾景殿の女御・明子の生んだ朝日宮である。
文句のない家柄に加え、血縁が深いためか沙霧宮と良く似た気高い面差しと、同じく旺盛な才気、そして素直で従順な人柄をもつ皇子と名高い。
末の皇子であるため世嗣争いには縁遠いと思われているが、一部の貴族からは利発さと癖のない朗らかさを見込まれ、沙霧宮、奥津宮に次ぐ皇太子候補と評されている。
しかし、当人にも母の明子にもそのような大それた望みはなく、ただ静かに平穏に暮らしていきたいと願っているのである。
「…………はぁ、寒いなあ」
冬の都の寒さは、言いようもない。
冷気が染み込んだような冷ややかな床板を踏みしめながら、朝日宮は白い息を吐き出す。
たっぷりと時間をかけて後宮内を一回りした朝日宮は、日が傾いてきて宴の刻限が迫ってきたのに気づき、気乗りのしない足取りで母の待つ綾景殿に戻った。
文句のない家柄に加え、血縁が深いためか沙霧宮と良く似た気高い面差しと、同じく旺盛な才気、そして素直で従順な人柄をもつ皇子と名高い。
末の皇子であるため世嗣争いには縁遠いと思われているが、一部の貴族からは利発さと癖のない朗らかさを見込まれ、沙霧宮、奥津宮に次ぐ皇太子候補と評されている。
しかし、当人にも母の明子にもそのような大それた望みはなく、ただ静かに平穏に暮らしていきたいと願っているのである。
「…………はぁ、寒いなあ」
冬の都の寒さは、言いようもない。
冷気が染み込んだような冷ややかな床板を踏みしめながら、朝日宮は白い息を吐き出す。
たっぷりと時間をかけて後宮内を一回りした朝日宮は、日が傾いてきて宴の刻限が迫ってきたのに気づき、気乗りのしない足取りで母の待つ綾景殿に戻った。



