考えている間にも、じわじわと身体が埋れていく。





沙霧は、本格的に慌てはじめた。




まるで自分の身体ではないかのように、全く自由がきかないのだ。




(こんなことになるとは………まさに、一寸先は闇だ!)





大樹の根元のほうへと引き込まれるようになりながらもわたわたと雪を掻き分け、なんとか身体を反転させることに成功する。





(ーーー三十六計、逃げるに如かず。


逃げるが勝ちだ。


とにかく、これ以上沈まないように逃げなければ!)





大樹とは反対の方向に、雪に埋れてひどく重い足を必死に踏み出す。




自分のほうに雪崩れこんでくるような雪に逆らい、なんとかして吹き溜まりから抜け出そうともがいた。





しかし、慣れない沙霧の力は、自然の圧倒的な力を凌駕することなど、到底かなわなかった。






もがけばもがくほどに、雪壺の中にずぶずぶとはまっていく。