沙霧の生母・康子は、出産してすぐに体調を崩し、病で臥せることが多くなった。
康子は自らの乳で皇子を育てることを望んだが、病のせいでそれもままならなかった。
そこで、やはり慣例に倣って、乳母(めのと)として一人の女性が雇われることになった。
沙霧の外祖父にあたる兼頼には、正妻の他に多くの愛人がいた。
その一人であったある高貴な女性・風見の、年の離れた妹が、家柄・教養ともにしっかりしているということで、栄えある乳母に選ばれた。
その女性が、疾風の母親・春風(ハルカゼ)であった。
春風は、少女の頃に宮家に連なる系譜の由緒正しき家柄の男に見初められ、長年の間愛され、一人の男子ーーー疾風を生んでいた。
しかし、不運にも男は遠方の土地の国司に任命されてしまい、正妻ではなかった春風は夫からの援助を失って、拠りどころのない、心もとない生活を送っていた。
それを見かねた姉の風見が、自分の愛人・兼頼に春風を紹介し、沙霧の乳母として推薦したのである。
時の運に恵まれた春風は、幼子の疾風を連れて、内裏へと移った。
そうして沙霧と疾風は、帝の統べる絢爛たる宮中で、乳兄弟として育ったのである。
康子は自らの乳で皇子を育てることを望んだが、病のせいでそれもままならなかった。
そこで、やはり慣例に倣って、乳母(めのと)として一人の女性が雇われることになった。
沙霧の外祖父にあたる兼頼には、正妻の他に多くの愛人がいた。
その一人であったある高貴な女性・風見の、年の離れた妹が、家柄・教養ともにしっかりしているということで、栄えある乳母に選ばれた。
その女性が、疾風の母親・春風(ハルカゼ)であった。
春風は、少女の頃に宮家に連なる系譜の由緒正しき家柄の男に見初められ、長年の間愛され、一人の男子ーーー疾風を生んでいた。
しかし、不運にも男は遠方の土地の国司に任命されてしまい、正妻ではなかった春風は夫からの援助を失って、拠りどころのない、心もとない生活を送っていた。
それを見かねた姉の風見が、自分の愛人・兼頼に春風を紹介し、沙霧の乳母として推薦したのである。
時の運に恵まれた春風は、幼子の疾風を連れて、内裏へと移った。
そうして沙霧と疾風は、帝の統べる絢爛たる宮中で、乳兄弟として育ったのである。



