*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「………それは、存じ上げませんでした。



ーーーなんと、申し上げればよろしいのか………」






顔を俯けて呟く疾風の肩を、沙霧は優しく叩いた。






「そんな顔をするな、疾風。


わたしはもう気にしていないよ。


もう大人だし………母上がいらっしゃらなくなっても、大丈夫だ」






「…………そうですか」






「でも、お前も母上にはよく懐いていたものな。



お前の気持ちもよく分かるよ」






「…………ええ。


お母君はお優しい方でしたから。



俺のような者にも、分け隔てなく良くして下さって………」






「…………うん。


お前はわたしにとって大事な友だからな」







沙霧と疾風は、亡き面影に思いを馳せるように、しんみりと俯いた。