「で、客っていうのは、どんな奴だ?」





寒さに肩を震わせ、蓑を掻き寄せて、疾風は前を行く氷見に声をかけた。





氷見は雪の深みに足をとられてよろめき、近くの樹の枝につかまりながら答える。






「そうだなぁ、なんつーか………。


色がなまっちろくて、ひょろひょろの、見目麗しい優男、って感じかなぁ」





「…………はぁ?」





「むさ苦しいお前に、あんな上品そうな知り合いがいたとは、意外だったよ」





「なまっちろい優男? そんな奴、いたかな………」






疾風はやはり訝し気な面持ちで、うーんと首を捻った。





考えを巡らせてみるが、こんな雪深い山にわざわざ訪ねてくるような知人など、そもそも思いつかなかった。





疾風は全ての過去を捨てて、この白縫山にやって来たはずなのだ。