また柔らかい雪に埋れた足を何とか引き出し、再びゆっくりと歩き出す。





遅々として進まない自らの歩みに呆れながらも、少しずつ上を目指した。






しばらくすると、はらはらと粉雪が舞い始めた。






(………とうとう降り出したか。


先を急がなければ。


吹雪になったら大変だ………)







諦めて引き返したほうがいいのではないか、という考えがちらりと過ぎったが、軽く頭を振って打ち消した。





戻れない理由が、彼にはあるのだ。







疲れた身体に鞭打って、ただひたすらに上を目指す。






そこに、大きな樹が見えてきた。





ほとんどの樹が雪に埋れて三尺ほどしか頭を出していなかったが、その大樹だけは六尺ほども顔を出していた。





太い幹に、太い枝。





頼りがいのありそうなその姿を見て、沙霧は少しほっとする。




その途端に、もう動けないほどの疲労を感じた。






(あの樹に寄りかかって、少しだけ休もう………)






そう思って、大樹を目指して最後の力を振り絞った。