吸い寄せられるように、疾風はそちらへ足を向けた。





「…………え?」





その紅いものの正体に気づいたとき、疾風は息を呑んだ。





「ーーー狐の子?」





雪に敷かれた蓑の上で丸くなっている小さなものは、炎のように紅い毛をもった子狐だったのだ。





「なぜ、こんなところに………」





思わずしゃがみ込んだとき、その蓑が泡雪の使っていたものであることに、疾風は気づいた。





「………もしかして……まさか」





無意識に手を伸ばし、柔らかい赤毛に触れる。




その瞬間、子狐が目を開き、澄んだ琥珀色の瞳が疾風を射た。




そして、次には、目映い光が辺りを満たした。





眩しさに目を閉じた疾風が、再び瞼を上げたとき、そこには生まれたての赤ん坊の姿があった。





先ほどの泡雪と同じ紅い髪、驚くほど白い肌、そして琥珀の瞳。




整った目鼻立ちは、涼やかな美貌をもつ沙霧にそっくりだった。