*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

真っ白な雪の上に広がる、真紅の長髪。




雪のように白く血の気を失った泡雪の顔には、びっしりと汗が浮いていた。



明らかに様子がおかしい。




「泡雪、泡雪………」




ぐったりと力なく閉じられた瞼。



沙霧は自らの袖で泡雪の汗を拭った。




ちらりと後ろを振り向く。



黒鶴を先頭に、男たちが近づいてくる気配がする。




沙霧は何も考えられず、ただ焦りのままに泡雪のほっそりとした身体を抱き上げ、速足で歩き始めた。




とにかく泡雪を安全なところまで運び、黒鶴たちのところに戻って、すぐにも白縫山を離れようと思った。




泡雪の身体をぎゅっと抱きしめる。




そのとき、泡雪は朦朧とする意識の中、ゆっくりと瞼を開けた。




その目に、迫り来る男たちの姿が映る。




こちらの姿を捉えたのか、弓に矢をつがえはじめていた。




泡雪は唐突にもがき、驚いている沙霧の腕から逃れた。



そして、沙霧の前に立ちはだかるようにして、男たちをまっすぐに睨みつける。