*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「………っ、射よ!」




黒鶴が叫ぶと、男たちは一斉に再び矢をつがえた。



しかし、あまりの速さに狙いが定まらない。



当てずっぽうに射られた矢は、泡雪の脇をすり抜けた。




そうこうしているうちに、泡雪たちの姿はどんどん遠ざかっていく。



黒鶴は男たちを率いて、雪に足をとられながら走り出した。





頬を打つ雪のつぶてに目を細めつつ、沙霧は顔を上げる。




泡雪は額に脂汗を浮かべながら飛び続けた。





「ーーーどうして来たんだ、泡雪………」





沙霧は苦しげな声音で問うた。





「待っていろと言ったのに………」





すると泡雪は眉根を寄せて沙霧を睨んだ。






「ーーー私と家族になると言ったじゃないか。

ずっと一緒にいてくれると言ったじゃないか。


なのになぜ………私を置いていくんだ」






泡雪の声は今にも泣き出しそうに歪んでいた。




沙霧ははっとして言葉を飲み込む。





「………すまない、泡雪。


でも、わたしは、君を巻き込みたくなかったんだ………」