*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

どんよりと曇った薄鈍色の空に、ゆらりと蠢く白と真紅。




容赦なく吹きつける風を孕んで激しく揺れる真っ白な着物の裾と、紅緋の長い髪だった。




その不可思議な姿に、黒鶴は息を呑んだ。





「………な、んだ、お前は……。


雪鬼、か………?」





民人たちの間で噂されている雪鬼ーーー雪女かと思った。




その美しい女は、燃え盛る火のような琥珀の瞳で、黒鶴たちを睨みつけている。




そして、宙に浮いたまま、真っ赤な唇を薄く開いた。





「………沙霧を、返せ」





黒鶴は耳を疑った。



思わず振り向いて沙霧を見つめる。




沙霧は苦しげに眉根を寄せ、





「………泡雪」





と呟いた。




その瞬間、黒鶴は沙霧の腕をとる。





「若宮さま! お気を確かに!

あの者は妖ですぞ!」





黒鶴の鋭い声に、沙霧は目を向けた。





「ーーー妖などではない。

泡雪は、わたしの………」





そこで、沙霧は口を噤んだ。