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「宮さま、お疲れではございませんか」
黒鶴が労わるように訊ねたが、沙霧は淡い笑みを浮かべて首を横に振った。
「いや、わたしは平気だ。
雪歩きにもすっかり慣れたからな。
それより、お前たちのほうこそ大丈夫か?
ときどき雪壺があるから気をつけたほうがいい」
「いえ、お気遣いありがとうございます」
沙霧を取り囲むようにして歩く男たちは、気遣いの言葉を受けて複雑そうな面持ちになった。
これから先、沙霧にはあまりに酷な宿命が待ち受けているというのに。
なぜ、そんなに穏やかな笑顔で、自らを捕らえた者たちを労わることができるのか。
黒鶴はまた一つ、深い吐息を洩らした。
そのとき、沙霧が不意に目を上げた。
その顔色が途端に変わったので、黒鶴は不審に思って、沙霧の視線を追った。
そこには、信じられない光景が広がっていた。



