*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

信じられない、と口々に叫ぶ男たちを、疾風はどんよりとした目で見つめた。





「………宮中というところは、そういうところなんだよ。

自分が権力を得るために邪魔になる者は、どんな汚い手を使ってでも、引き摺り下ろそうとするんだ。


それでも安心できないならば、命を奪うことさえ厭わないんだ………」





彼らは愕然とした。




雲の上の華やかな世界だと思っていた内裏が、こんなにも血生臭い、欲にまみれた場所だったとは、思いも寄らなかった。





泡雪の身体がふらりと揺れ、疾風は慌てて抱きとめる。




しかし、次の瞬間には泡雪はしっかりと自分の足で立っていた。




そして、その瞳は、激しい怒りの炎が燃え盛っていた。





「………泡雪?」





「行かなければ………。

沙霧を助けなければ」





泡雪は熱に浮かされたように呟き、疾風の手を振り払って、そのまま宙に飛び上がった。





なびく髪の紅が、残像のように残っていた。