*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語








そのころ疾風は、白縫山の盗賊たちを連れて、吹雪の中を雪原へ向かっていた。




隣を歩く氷見が疾風の顔色を窺う。



いつも穏やかで冷静な疾風が、切羽詰まったような厳しい表情を浮かべていた。




沙霧が戻らないというだけで、なぜそこまで動揺しているのか、氷見には分からない。



しかし、どうやら只事ではない事態になっているらしいことは分かった。





沙霧の足跡を辿って雪原に着くと、そこにはこの静かな山に似つかわしくない、複数の足跡が残っていた。




その足跡は、雪原の中央あたりで止まっている。



一筋の沙霧の足跡と、複数の足跡がそこで出会い、来た道を戻るように引き返している。




疾風の顔が一気に青ざめた。





「………沙霧は、連れて行かれたんだ」





独り言のような小さな声は、吹雪の中では男たちの耳に届かなかった。




氷見は「なんだって?」と訊き返す。




疾風が苦しげな顔を上げ、口を開いたとき。