*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧の凛とした、有無を言わさぬ態度に、男たちは気圧されたように黙っている。



黒鶴は「御意」と短く答えて頭を下げ、沙霧を見つめ返した。






「貴方さまが、この白縫山に巣食う盗賊たちと行動を共にしておられたことは、調べがついております。

抗うことなく囚われてくださる代わりに、その者たちには手出しをするな、と、そう仰るのですね」





「ああ、そうだよ。

さすがは兼正どの腹心の部下だけあるな。

話が早くて助かるよ」






沙霧はどこか自嘲的な笑みを浮かべた。






「………彼らに手出しをしないと誓ってくれるのなら、わたしは喜んでそちらの手に落ちるよ」






吹雪き始めた風を受けて、緩く束ねられただけの沙霧の髪のほつれ毛が踊るのを、黒鶴は見るともなく眺めた。




宮中にいたころ、数多くの女房たちの注目を一身に集めていた沙霧の容貌は、このような深い山奥で賎民と同じようなみすぼらしい身なりをしていてさえ、やはり清らかだった。





(………美しいお方だ)





その美しさが見た目だけのものでないことは、黒鶴の目にも明らかだった。