*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧は、泡雪を抱く腕を緩め、琥珀の瞳を覗き込んだ。







「そうだなぁ、いま思えば、本当に、窮屈な思いをしていた気がする。



あそこはね、考え無しに口を開いて、不用意な発言をしてしまうと、それが命取りになるようなところだった。


誰もがそんな緊張感に顔を強張らせて、自由に息も出来ないような暮らしをしていた。



でも、それが普通のことだと、皆が思っていると思うよ。


そんな暮らしが、世間とはかけ離れているだなんて、考えることもなかった」







「…………ふぅん」







沙霧は空を仰ぎ、遠い目をして語った。




しかし、何かを思い出したように、「あぁ、でもね」と視線を戻す。







「たった一人だけ、君のように、思いのままを言葉にすることができる者がいた」






「…………ふぅん、だれ?」






「わたしの弟だよ」







沙霧は、それはそれは嬉しそうに、にっこりと答えた。