*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

夜の帳が下りると、白縫山は闇に沈んだ。



雲間から微かに洩れる月の光にぼんやりと照らされた雪の粒が、ほの白く舞い踊る。






(すっかり遅くなってしまったな………)






いつの間にか、ずいぶんと時間が経っていたことに、泡雪は今更ながらに気がついた。





白縫党が住み着いている洞窟の並ぶ、黒い岩壁の近くまで来ると、泡雪は少し歩調を緩めた。






「――――泡雪!!」






思いがけず自分の名を呼ぶ声を聞き、泡雪は思わず足を止める。




視線を巡らせると、自分の住む洞窟の入り口に、ほっそりとした人影が立っていた。






雪の向こうの人影の顔は、泡雪の目にもはっきりとは見えなかったが、その輪郭だけで充分だった。







「沙霧………」






泡雪は小さく息を洩らすように呟いた。




人影が身じろぎをし、こちらへ向かってこようとしているのを察し、泡雪も足を踏み出した。