*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

すぐにでも泡雪を探しに行きたかった。



だが、奥深い雪山の中を、なんの当てもなく彷徨ったところで、たやすく見つけられるとは思えない。







(泡雪がどちらの方向へ飛んだのか、私には、まったく見当もつかない………)







自分が帰らなければ、疾風や玉梓、氷見たちが心配するだろうことも、容易に想像できた。







(ーーー泡雪は、この山で生まれ育ったのだ。


道に迷ったりすることなど有り得ない。


すぐに戻ってくるはずだ………)







沙霧は悩んだ末、とりあえず、引き返して泡雪の帰りを待つことを決意した。




しかし、沙霧の脳裏には、矢に射られて血塗れになっていた泡雪の姿が、ちらちらと蘇っていた。







(あのようなことは、滅多にあることではない。


大丈夫に決まっている………)







不安に苛まれる自分に言い聞かせるように、沙霧は、大丈夫だ、大丈夫だ、と小さく繰り返した。