*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

沙霧の思いを知ってか知らずか、疾風はにこやかに前を見つめながら歩を進める。







「………なぁ、沙霧」






「うん?」








名を呼ばれて、沙霧は目を上げた。







「だからさ、大丈夫だよ」






「へ? 何の話だい?」







疾風は悪戯っぽく笑い、沙霧の目をじっと見つめて言う。








「玉梓は、強い女だよ。



だから、心配しなくても、大丈夫さ。


あいつは、きっと、どんなことがあっても、無事に赤子を産むよ。



俺は、そう信じてるんだ。


だから、お前も、そんなに気を揉まなくていいんだよ」







「…………うん、そうだな」








沙霧はこくりと頷き、薄縹色(うすはなだいろ)に曇る雪空を仰ぐ。