*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

疾風は眉を下げ、はにかんだような表情で沙霧を見返す。






「娘は、俺を追って都を出て、この山までやって来たんだよ。



俺みたいな世間知らずの騙されやすい男を、一人にしておくのは心配だから、と言ってね」






「なんと、まぁ………」







沙霧は驚きのあまり、うめくように言った。



か弱い女性に、そのような行動力があるとは、沙霧の想像を大きく超えていた。







「俺は身ひとつで都を出たが、娘はしっかりと山支度をして、保存のきく食べ物も持ってきていた。


何日もかけて母親を説得して、とうとう納得させて、家を出てきたのだと語ってくれたよ」






「………しっかりしているなぁ」






「あぁ、感心したよ。


でも、驚くのはそれだけじゃない」