*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「娘は、ここを出てどこに行くつもりか、と訊ねた。


次の引っ越し先も決まっていなかったから、俺は思いつきで、西の白縫山にでも行こうかな、と答えた。



娘は、ふうんそう、気をつけて、と言って、餞別に、自分で縫ったという麻の着物を贈ってくれた」






「親切な娘だなぁ」






「あぁ、ほとんど話をしたこともなかったんだが、良い子だったんだな、と思ったよ。


その後、俺はほとんど身ひとつで都を出て、やっぱり住むところが見つからなくて、しかたなしに、思いつきのままに白縫山に入った。



夏の白縫山は、樹々がこれでもかと生い茂っていて、本当に歩くのにも往生して、おまけにひどく蒸し暑かった。


今みたいに人が住んでいるわけでもないから、獣道しかなくってな。



それで、十日ほど山の中をさまよって、やっと、住めそうな洞窟を見つけたときには、本当に嬉しかったよ」







沙霧は相づちを打ちながらも、この話が、『女は強い』という話にどう繋がっていくのだろう、と不思議に思っていた。