*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

疾風は、くくく、と可笑しそうに笑う。






「その娘は、こんなふうに言ったよ。



―――その青菜は、どう安く見積もっても、合わせて五文にもならない。

まあ、取り引きの上ではよくあることだ。


まんまと引っかかってしまったほうが悪い。

間抜けだったのだ。


しかもその青菜は、ところどころしおれて、ずいぶん痛んでいる。

今夜のうちに食べきるか、漬け物にでもしないと、食べられたものじゃない。





………俺は、言葉も出なかったね」







沙霧は口をぽかんと開いたままで聞いていた。







「………つまり、ふつうよりも高く買わされてしまった、ということか?」






「あぁ、そうだよ。

半値にしてくれる、というのを信じて買ったら、実際には、倍以上の値段で買わされていた、というわけさ。


そういうのを、巷(ちまた)では、『ふっかけられた』、『つかまされた』と言うんだ」







「……………」







沙霧はなんとも複雑な表情になった。




内裏の奥深くで、大勢の人々に傅かれて、皇子として大切に育てられた沙霧は、人が人を騙したり、騙されたりすることがあるのだと、知るよしもなかったのだ。