*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

「沙霧………お前は、女はみんな、か弱くて、すぐに壊れてしまうと思っているのかもしれないが」







幼い頃、母について後宮で暮らしていた疾風は、沙霧の周りにいた女性がどんなものなのか、よく理解していた。







「でもなぁ。


俺は、宮中を出て普通の民人たちと交わるようになって、それは違うのかもしれない、と思うようになった」






「ほう?」






沙霧は興味を引かれたように顎を上げる。






「ひとつ、思い出話をするよ」





「あぁ」






疾風は、昔を懐かしむような目つきで、語り始めた。







「俺が初めて市で買い物をしたときな、青菜を買ったんだ」





「ほう、青菜を」





「あぁ、芋が手に入ったので、一緒に煮ようと思ってな。


それで、ある店に行った。

そこの店主は、まだ年若い女だった。


がりがりに痩せて、目ばかり大きく見えた。

やけに弱々しくて、こんな女が健気に一人で店をやっているのか、と俺は可哀想に思ったよ。


青菜が欲しい、と言うと、女は、竹籠いっぱいに入った青菜を出してきてな。

この籠の中の青菜は、合わせて銅銭二十文の量だが、これを全部まとめて買ってくれるなら、十文にまけてやる、と言うのだ」