*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語








「何か、買い忘れたものはないだろうか」

 




沙霧は雪を踏みしめながら、後を歩く疾風に声をかける。



心配そうな声音に、疾風は笑いを洩らした。






「まあ、大丈夫だろうさ」






あっけらかんと答えるので、沙霧は不服そうに、「疾風は呑気だなあ」と呟く。






「妻の初産だというのに、まったく。


用心するに越したことはない、と言うだろう?



わたしは、いざ出産という時に、もしも足りないものがあったらどうしようか、と考えると、居ても立ってもいられないような、落ち着かない気持ちになるよ。


手足を置くところ無し、といった気分だ。



あぁ、本当に、これで事足りるのだろうか………」






都の市で買ってきた物をぶつぶつと数え上げ、三つで足りるのか、やはり余裕をもってあと一つ、などと独りごちる沙霧が、可笑しい。





疾風はからからと明るく笑いながら、少し足を速めて沙霧の横に並び、その肩を叩いた。