*華月譚*雪ノ章 若宮と白狐の恋物語

(…………静かだ)







髪を梳く手を止めて、泡雪は思う。




白縫党の人々と暮らすようになってから、沙霧と離れたことは、一度もなかった。





たった数刻、沙霧の姿を見ていないだけなのに、まるでもう二度と、永遠に会えないような不安な気持ちになるのは、なぜだろう。






ーーー時の流れが、遅い。






これまで泡雪は、獣たちと同じように、寝床にしていた洞穴で目覚めて、獲物を捕らえて食べ、暗くなったら寝床に戻って寝るだけの暮らしをしてきた。




だから、時間の流れなど、意識したこともなかった。





ずっと一人で生きてきたので、誰かが共にいることで、そしてまた、その誰かがいないことで、時間の流れが変わってしまうことなど、考えたこともなかった。